テレワーク(在宅勤務)というものが一般的になってまだ1ヶ月程度だが、既にネット上にはこんな声が。
・寂しすぎる
・精神的にキツイ
・もうイヤだ
私の友人たちも同じような感想で、テレワークが働き方の常識になったら絶対に困ると愚痴をこぼしていた。
実際、コロナが落ち着いても、基本テレワークになるのではという世間の風潮だが、個人的には定着しないような気がしている。
そんな中、間違いなく定着しないと断言している人が。
著名な文筆家の古谷経衡さんという方。
説得力十分な、さすがプロという文章を抜粋すると。
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私は商業ライターとしてデビューしてから今年で10年になるが、その間、誰に言われるまでもなくテレワーク(在宅勤務)を励行してきたプロ・テレワーカーである。
コロナ禍ですっかり労働者に定着したテレワークであるが、通勤というストレスから解放された多くの労働者は、テレワークの何たる素晴らしさ、何たる便利さ、何たる自由さに狂喜した。
しかし、それは最初だけである。
長期にわたるテレワークは、確実に人間の精神を蝕む。
代り映えのしない自宅風景。公私の境界の不明瞭さ。そして日常と非日常の混濁である。
いくら通勤がストレスだと言っても、人間の脳は無意識に車窓の風景、車内の光景、乗客の雑談等を処理し、取捨選択している。
自室という密閉空間で、この刺激がなくなると人間はどうなるのか。
すなわち急速な感情の劣化や興味の喪失、認知機能の低下である。
つまり、鬱状態である。
人間が密閉空間に長時間閉じ込められることにより、どのような心理変化が起こるのかという研究は、著名なところではスタンフォード監獄実験がその筆頭である。
密閉空間における長期滞在は、正常な人間の精神をマヒさせることがはっきりとわかっている。
テレワーク最大の敵とは、作業効率の高低ではなく、人間の精神力の劣化である。
私が10年テレワークをして痛感した最大の課題も、代り映えしない日常風景にどうやって色彩を与えるのか、その一点に尽きる。
テレワークは時間の感覚を鈍らせ、有形無形の受信情報の低下により、何の対策もしなければすぐに抑鬱傾向が顕著となる。
そしてそれは、結局のところどのような処方で軽減されるのかというと、本末転倒であるが、
移動の採用である。
仕事場をラブホテルや旅館に移す。目的はないが車で遠隔地まで走ってただ帰ってくる。外食、旅行を頻繁に行う。ぶらり散歩やウインドーショッピング、独り居酒屋も良い。
こういうことをしないと、本当に精神が参ってしまうのである。
結局のところ、完全なるテレワークというのは無理だという結論に達する。
人間は適度に移動しないとダメになる生き物だ。
出勤自粛をしてテレワークを推奨し、姑息的にそれを導入するのは賛成だが、テレワーク素人が一朝一夕にそれを長期間こなすのは至難の業である。
コロナ禍によって、オフィスでできる作業が自宅でできるのなら、コロナ禍が去った以降もテレワークでよいのではないか、という楽観論も耳にするがそれは素人の考えである。
コロナ禍が去ったのなら、労働者は速やかに職場に復帰し、通勤体制に服するべきである。
またストレスの日々がやってくると思うが、実は職場への移動がなくなった時、人間は本当のストレスに苛まれるのだ。
テレワーク10年の私が言うのだから間違いはない。
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なるほど。
テレワーク反対派にとっては力強いご意見。
数年後に「あー、こんなの流行った時期もあったよねー」ってなるのかもしれない。